巨人はなぜCSで負けた?悪夢のサヨナラ負け、3つの敗因を徹底解説

CSでDeNAにサヨナラ負けを喫し、マウンドでうなだれる巨人の投手。巨人のCS敗因となった延長11回の劇的な結末シーン。 スポーツ
延長11回、2死からサヨナラ打を浴びた巨人。2年連続でCS敗退が決まった瞬間。

この記事のポイント

  • 5点先制、エース戸郷。誰もが勝利を確信したはずの試合は、なぜ開始わずか1イニングで天国から地獄へと突き落とされたのか?
  • 「あと一人」で掴めたはずの勝利。延長11回のマウンド、なぜそこに彼がいたのか? 勝敗を分けた“回跨ぎ”采配の謎に迫る。
  • これは不運ではない。大勢のミス、薄すぎるブルペン…シーズンを通して見て見ぬふりをしてきた“膿”が、最悪の形で噴出した必然の敗北だった。
  • 阿部監督の「執念」は光か、それとも影か。この悪夢は、来季への重い宿題か、それとも本当の意味での再生への序章となるのか。

序章:「またか…」悪夢のサタデーナイト。巨人はなぜ、またしてもDeNAに敗れ去ったのか

「またか…」。横浜の夜空を見上げ、そう呟いたファンは一人や二人ではなかったはずです。2025年10月12日、横浜スタジアム。クライマックスシリーズ(CS)ファーストステージ第2戦。読売ジャイアンツは初回に5点を奪い、崖っぷちからの大逆襲を誰もが信じました。延長11回には一度は勝ち越し、勝利の女神がようやく微笑んだ…かに見えました。

しかし、私たちを待っていた結末は、あまりにも残酷な「悪夢のサヨナラ負け」TBS NEWS DIGも報じたように、2年連続で横浜DeNAベイスターズの前に散り、阿部慎之助監督の1年目はあまりにもあっけなく幕を閉じました。あと一人、たった一つのアウトで掴めたはずのファイナルステージへの切符は、なぜこうも無情にスルリと手からこぼれ落ちたのでしょうか。

この劇的な敗戦は、単なる不運ではありません。試合のあらゆる場面に、そしてシーズンを通して見過ごされてきたチームの“病巣”が凝縮されていたのです。さあ、この悪夢の一夜をもう一度、冷静に振り返ります。なぜ5点のリードは蜃気楼のように消えたのか。あの采配に問題はなかったのか。悪夢の裏に隠された、阿部巨人の構造的欠陥に、今こそメスを入れます。

分析1:なぜ「絶対的エース」は5点のリードを1イニングで溶かしたのか?

もし、この試合の敗因をたった一つだけ挙げろと言われたら? 私は迷わず、初回の攻防を指さします。5点を先制しながら、その裏にすぐさま同点に追いつかれたあの展開。ここに、勝敗を決定づけた「2つの致命的な誤算」が隠されていました。

歓喜から一転…エース戸郷の心に何が起きたのか?

後がない巨人は初回、DeNA先発ジャクソンに牙を剥きました。一番に抜擢された佐々木俊輔の先頭打者ホームランを皮切りに、中山礼都の3ラン、さらにはマウンドに上がるはずの戸郷翔征自身のタイムリーまで飛び出し、打者一巡の猛攻で一挙5得点。これ以上ない、完璧なスタートだったはずです。

しかし、あなたは信じられるでしょうか? その歓喜が、わずか数十分で悪夢に変わることを。マウンドに上がった我らがエース戸郷は、まるで別人のようなピッチングを見せます。DeNAの佐野に2ラン、石上に3ランを浴び、あっという間に5点のリードを吐き出してしまったのです。試合後、戸郷はうつむきながら、絞り出すようにこう語るしかありませんでした。

初回に点を取ってもらったのですが、その点を守ることができずに申し訳ないです

日刊スポーツ「【巨人】延長サヨナラ負けでCSファーストステージ敗退決定 執念 …」


これこそが一つ目の、そして最大の誤算です。
大量援護が逆に「守りに入ってしまう」という心の隙を生んだのか。それとも、DeNA打線の執念の前に冷静さを失ったのか。いずれにせよ、絶対的エースが試合開始早々にゲームプランを根底から破壊してしまった。この事実は、チームに重く、重くのしかかりました。

完全に「流れ」を失った沈黙の中盤。ベンチに打つ手はなかったのか?

試合が振り出しに戻った瞬間、巨人はスタジアムの支配権を完全に手放してしまいました。DeNAが2回から素早く継投策に切り替え、流れを渡すまいと必死の抵抗を見せる中、あれだけ猛威を振るった巨人打線がピタリと沈黙。一度手放した主導権を、まったく取り戻せなかったことが、二つ目の誤算です。

もちろん、阿部監督も手をこまねいていたわけではありません。乱調の戸郷を3回で見切り、4回から西舘を投入。中川、大勢、マルティネスと、持てる駒を次々と注ぎ込み、必死の無失点リレーで試合を繋ぎます。しかし、打線がそれに呼応できない。好機は作る、だが、あと一本が出ない。試合は重苦しい空気のまま、延長戦という名の消耗戦へと突入していくのです。

短期決戦において「流れ」がいかに残酷な牙を剥くか。あれだけの猛攻を見せながら、なぜそれを継続できなかったのか。攻撃陣の淡白さもまた、この敗戦における深刻な原因の一つと言わざるを得ないでしょう。

分析2:「あと一人」でなぜ勝てない? 延長11回、勝利の女神が逃げ出した采配の謎

5-5のまま突入した延長戦。幾度となく訪れたピンチを凌ぎ、迎えた11回表、ついに巨人は執念で勝ち越し点を奪い取ります。しかし、その裏に待っていたのは、誰もが目を疑う信じがたい結末でした。この終盤の攻防、あなたの目にはどう映ったでしょうか。私は、この采配こそが勝敗を分ける最後の引き金になったと考えています。

執念で掴んだ勝ち越し、そして指先からこぼれ落ちた勝利

延長11回表、先頭の小林が二塁打で出塁すると、犠打と敬遠で1死一、三塁。ここで打席の佐々木が放った一塁へのゴロは、決して格好良い当たりではありませんでした。しかし、そのボテボテのゴロが執念のタイムリー内野安打となり、ついに6-5。この時点で、日本中のG党が勝利を確信したはずです。

その裏、マウンドには10回から続投の田中瑛一。先頭から二人を完璧に打ち取り、2アウトランナーなし。勝利まで、あと一人。しかし、ここからが悪夢の始まりでした。スポーツナビの試合経過が示すように、石上にしぶとく内野安打で出塁を許すと、すかさず二盗を決められ、林に同点タイムリー。さらに代打・度会に繋がれ、最後は蝦名にサヨナラ打を浴びて万事休す。

なぜ田中瑛だったのか? あなたなら、誰をマウンドに送ったか

ここで、私たちは最大の疑問にぶつかります。なぜ、勝ち越した11回裏のマウンドを、回跨ぎの田中に託したのか? 彼はシーズン中、勝ちパターンの一角を担う投手ではありませんでした。勝利の方程式である大勢、マルティネスは既にマウンドを降りていたとはいえ、他に選択肢は本当に無かったのでしょうか。

もちろん、これは結果論だと言われればそれまでかもしれません。2アウトまで漕ぎつけたのですから、田中を責めるのは酷でしょう。しかし、それでも私たちは問わなければならない。シーズンを締めくくる、一年で最も重要なあの局面で、なぜ彼を続投させたのか。この投手起用が、直接的な敗因となったことは、もはや否定できない事実です。

考察:これは事故ではない、必然だ。阿部巨人が抱える「不都合な真実」

この一試合の敗戦は、氷山の一角に過ぎません。その根底には、阿部監督1年目のシーズンを通して見え隠れしていた、チームの構造的な欠陥、言うなれば「不都合な真実」が存在します。このCS敗退は、それらの問題が最も厳しい形で噴出した、必然の結果だったのです。

「大勢・マルティネス以外は…」薄すぎるブルペンが生んだ必然の結末

今シーズンの巨人が、どれだけ終盤の逆転負けを喫してきたか、あなたは覚えているでしょうか。その最大の原因は、リリーフ陣の致命的な層の薄さにあります。最優秀中継ぎの大勢、そして守護神マルティネスへの依存度は異常なほど高く、彼ら以外の投手で僅差の試合を勝ち切る力が絶望的に欠けていました。

その象徴が、この試合の8回の攻防です。7回途中から回またぎで登板した大勢が、自らのミスも絡んで1死一、三塁のピンチを招いてしまう。ここで阿部監督は、たまらずマルティネスを投入します。この「執念の継投」でピンチこそ脱したものの、本来であれば9回まで温存したい最強のカードを、8回で切らざるを得なかった。日刊スポーツが報じたように、この場面は凌いでも、結果的に11回に送り出せる信頼性の高い投手が残っていなかった。これが、チームの構造的な欠陥と言わずして、一体何なのでしょうか。

阿部監督の「執念」采配、その光と影

阿部監督はシーズンを通して「執念」をスローガンに掲げ、積極果敢な采配を繰り返してきました。8回のマルティネス投入は、その執念が実った「光」の側面だったと言えるでしょう。何としてでもこの回はゼロで抑える、という監督の強い意志が、チームとファンに伝わった瞬間でした。

しかし、その采配には常に「影」の側面も付きまといます。奇策とも言える打順の組み替えが機能しないことも多く、今回の投手起用のように、最悪の形で裏目に出るケースもありました。試合後の監督の言葉が、その重みを物語っています。

野球って恐ろしいな、と。僕も初めてこういう立場でこういう試合をさせてもらって。敗戦の責任は僕にあります

スポーツ報知「【セCS】敗退の巨人・阿部監督「野球って恐ろしいな」「敗戦の責任は僕にある」」

このあまりにも痛い敗戦は、阿部監督自身にとっても最大の教訓となったはずです。執念や気迫だけでは勝てない。それを支えるだけの戦力的な厚みと、土壇場での冷静な状況判断がなければ、短期決戦の頂には立てない。その冷徹な現実を、まざまざと突きつけられた一戦でした。

結論:絶望の先に光はあるか。来季へ向けた緊急処方箋

あまりにも衝撃的な形で2025年シーズンを終えた巨人。しかし、いつまでも下を向いている時間はありません。この身を切るような悔しさこそ、来季の逆襲への最大のエネルギーになるはずです。今回の敗因を徹底的に洗い出し、チームが取り組むべき3つの緊急処方箋を、ここに提言します。

処方箋1:もはや待ったなし!「勝利の方程式」の全面再建

最優先課題は、言うまでもなくリリーフ陣の再建です。大勢、マルティネスに続く「勝ちパターン」を最低でもあと2枚は揃えなければ話になりません。ドラフトでの即戦力リリーバーの獲得、現有戦力の底上げは当然として、FA市場での大胆な補強も視野に入れるべきです。誰か一人が欠けても揺るがない、磐石のブルペンを築くこと。それがすべての始まりです。

処方箋2:岡本和真を孤立させない!「線」で戦う打線への脱皮

岡本和真という絶対的な主砲は健在です。しかし、問題はその前後を打つ打者の固定ができなかったこと。シーズンを通して流動的だった打線は、繋がりを欠き、ここ一番での得点力不足を露呈しました。若手の台頭を促しつつ、チームの骨格となる打線を早期に固め、誰か一人の不調に左右されない「得点パターン」を確立することが急務です。

処方箋3:この悔しさを忘れるな!「負けに学ぶ」組織への変革

この敗戦は、技術や戦術以前に、短期決戦特有の「流れ」を掴むことの難しさ、そしてたった一つのミスが命取りになる怖さを、骨の髄まで教えてくれました。この経験を、絶対に無駄にしてはなりません。シーズン中の戦いの中から、いかにして勝負所を見極め、主導権を渡さない野球を徹底できるか。この地獄のような悔しさを知るチームだけが持つ『勝負勘』を、来季こそは発揮してほしい。心からそう願います。

悪夢のような敗戦の先に、必ず光はあるはずです。この絶望的な終戦を、常勝軍団復活への本当の第一歩とできるか。阿部巨人の真価が問われる、長く、そして重要なオフシーズンが、今、始まります。

コメント

タイトルとURLをコピーしました