この記事のポイント
- 国会で大臣が「賃上げ策」を問われ答弁不能に。この一件は、日本の賃金問題の根深さを象徴する出来事でした。
- なぜ、あなたの給料は上がらないのか?その背景には、企業の過剰な「内部留保」や、人件費をコストとしか見なさない経営体質という根深い病巣が潜んでいます。
- 賃上げを実現するには、企業の体質改善はもちろん、税制によるアメとムチ、スキルが正当に評価される労働市場改革など、政府の本気の政策が求められています。
- 政治家の言葉は、私たちの生活そのもの。その言葉の裏側を見抜き、より良い未来を求めて声を上げ続けることが、今こそ重要です。
「またか…」――国会で起きた茶番劇。あなたの給料が上がらない“本当の理由”が、そこにあった。
「しくじり大臣w」「もはや放送事故」「これが日本の実力か…」
2025年11月13日の参議院予算委員会。ネット上を駆け巡ったのは、そんな呆れと怒りが入り混じった言葉の数々でした。渦中の人物、城内実・日本成長戦略担当相は、共産党・小池晃議員の鋭い質問に完全に思考を停止させ、ついには委員長から答弁を打ち切られるという前代未聞の事態を引き起こしたのです。
議場は爆笑。高市早苗首相が「先ほど少し答弁でしくじったかもしれませんが」と、まるで他人事のように“いじる”ことで、一件落着したかのような空気が流れました。しかし、あなたはこの光景を見て、心から笑えたでしょうか?
笑えるはずがありません。なぜなら、大臣が何一つ答えられなかったその質問こそ、「なぜ、大企業は儲かっているのに、私たちの給料は一向に上がらないのか?」という、この国で暮らす私たち全員の生活に突き刺さる、あまりにも重い問いだったからです。
この記事は、単なる「大臣の失態」を面白おかしく解説するものではありません。国会という舞台で露呈したこの国の「不都合な真実」を深く掘り下げ、私たちの給料を上げるために本当に必要なことは何か、あなたと一緒に考えていきたいと思います。
第1章:国会が凍りついた90秒。あの「大臣、答弁不能」事件を完全再現する
いったい、議場で何が起きていたのか。デイリースポーツが報じたように、そこには日本の政治の機能不全を象徴するような、異様な空気が流れていました。まずは、城内大臣が立ち往生するまでの流れを、再現してみましょう。
突きつけられた「不都合なデータ」:なぜ俺たちの給料だけが上がらないのか?
質問に立った共産党の小池晃氏は、一枚のパネルを掲げます。そこに映し出されたのは、大企業の利益や株主配当がウナギ登りに増え続ける一方で、私たちの給料は地面を這うように横ばい、という残酷な現実でした。
「一部株主の利益のため国民の雇用や賃金を犠牲にしていたら、日本経済は失われた30年どころか40年になり衰退する」。小池氏の言葉は、多くの国民の心の叫びそのもの。彼は、この構造的問題に政府はどう切り込むのか、具体的なビジョンを問いただしたのです。
「えーっと…色々あると…」思考停止した担当大臣
答弁に立ったのは、何を隠そう「賃上げ環境整備担当大臣」という、まさにこの問題のド真ん中にいるはずの城内氏。しかし、彼が絞り出した言葉は、あまりに抽象的でした。
「企業を異常な貯蓄超過から正常な投資超過に戻し、コストカット型を脱して投資成長型を目指し、労働者への分配も増えていく」
まるで使い古された教科書を読み上げるような答弁。その瞬間、小池氏の鋭い一言が突き刺さります。「それ、どうやってやるんですか?」。この一撃で、城内大臣のメッキは完全にはがれ落ちました。
「分配、いろいろあると思いますが、私、賃上げ、環境整備の担当ですので、さまざまな形で賃上げについても、しっかりと…まあ…色々とあると思いますので…」
もはや答弁ではありません。「色々」「様々」「しっかり」という空虚な言葉が虚しく響くだけ。「税を使うとか色々あると…」と漏らしたところで、「税を使うって具体的に何をやるんですか?」と畳みかけられ、万事休す。彼は「検討させていただきます」と呟き、蒼白な顔で自席に崩れ落ちるしかなかったのです。
「もういいです」強制終了からの、首相による“公開処刑”
この惨状を見かねた藤川政人委員長が「もういいです、総理に答弁いただきます」と、事実上の強制交代を宣告。高市首相が冷静に具体策を述べ、場を収めました。
しかし、本当の悲劇はこの後に起きます。質疑の最後に、首相は振り向きざま、城内大臣を指さしてこう言い放ったのです。
「あそこにいる、賃上げ環境整備担当大臣!先ほど少し答弁でしくじったかもしれませんが担当大臣に指示しました」
この“公開処刑”ともいえる「いじり」で議場は爆笑の渦に。しかし、テレビの前の私たちが感じたのは、笑いではなく、この国の未来に対する深い、深い絶望ではなかったでしょうか。
第2章:大臣は悪くない?日本経済を蝕む「給料が上がらない」3つの病巣
城内大臣が答えられなかったのは、単に彼個人の能力が低かったからなのでしょうか。私は、そうは思いません。彼の姿は、「なぜ日本の賃金は上がらないのか?」という根源的な問いに対し、政府自身が何一つ有効な答えを持っていないという現実を、残酷なまでに映し出してしまったのです。
あなたの給料が上がらないのは、あなたが頑張っていないからではありません。この国には、経済の血流を止めてしまう、構造的な病巣が存在するのです。
病巣1:稼いでも配らない。「内部留保」という名の企業の“貯金中毒”
あなたが汗水たらして稼いだ利益は、どこに消えているのでしょうか?その最大の犯人こそ、日本企業が抱え込む「内部留保」です。企業が稼いだ莫大な利益は、あなたの給料や未来への投資には回らず、ただひたすら会社の銀行口座に積み上げられています。
なぜ、こんなことが起きるのか。それは「失われた30年」で染みついた、守りの経営、すなわち「コストカット型経営」という名の呪縛のせいです。人件費は未来への投資ではなく、真っ先に削るべきコスト。この考え方が、企業の利益が伸びても、働く私たちには一滴も還元されないという、歪んだ現実を生み出しているのです。
病巣2:いつでも切れる“調整弁”。「非正規雇用」という名の時限爆弾
賃金停滞を加速させるもう一つの要因が、非正規雇用の拡大です。エデンレッドジャパンの記事が鋭く指摘するように、正社員より賃金の低い非正規労働者が増えれば、国全体の平均賃金が下がるのは当然のこと。企業にとっては景気の波を乗り切るための便利な“調整弁”かもしれませんが、これは将来の日本経済に仕掛けられた時限爆弾に他なりません。
病巣3:ダラダラ残業は美徳?先進国で“ビリ争い”を続ける日本の生産性
「日本人は勤勉だ」というのは、もはや幻想かもしれません。noteの記事「日本企業の給与が上がらない構造的問題と打開策」が示すように、日本の労働生産性(一人の従業員が生み出す利益)は、先進国の中で驚くほど低い位置にあります。少ない利益しか生み出せなければ、給料の上げようがない。長時間働くことが評価され、賢く働くことが評価されない。そんな旧態依然とした働き方が、私たちの首を絞めているのです。
【黒幕は誰だ?】大臣が“素人”だらけになる日本の政治システムの歪み
そして、もう一歩引いて見てみましょう。「賃上げ」という看板を背負った大臣が、その中身を全く語れない。なぜ、こんな悲劇が起きるのか。それは、専門性よりも党内の派閥争いや当選回数が優先される、日本の「組閣システム」そのものに欠陥があるからです。
経済の素人が経済の大臣に、外交の素人が外務大臣になる。そんな「適材不適所」がまかり通る国で、どうして的確な政策が打てるでしょうか。城内大臣の失態は、彼一人の問題ではなく、日本の政治が抱える根深い病の、ほんの一つの症状に過ぎないのです。
第3章:もう待てない!あなたの給料を“本気で”上げるための3つの劇薬
問題点を嘆いていても、1円にもなりません。この絶望的な状況をひっくり返し、私たちの給料を本気で上げるには、どんな手立てがあるのでしょうか。
高市首相は「コーポレートガバナンスコードの見直し」という、どこかで聞いたような言葉を口にしました。もちろん、やらないよりはマシでしょう。しかし、そんな生ぬるい対症療法で、30年溜まった膿が出せるはずもありません。今、必要なのは、覚悟を持った“劇薬”です。
処方箋1:“アメとムチ”で企業のカネを吐き出させる「内部留保課税」
企業の行動を変える最も手っ取り早い方法は、税金という名の「アメとムチ」です。
- 本気のアメ(優遇措置): 今の賃上げ促進税制なんて、気休めにしかなりません。減税率を大胆に引き上げ、「賃上げしないと損だ!」と経営者が青ざめるほどのインセンティブを与えるのです。
- 覚悟のムチ(ペナルティ): 企業が溜め込み続ける過剰な内部留保に、時限的でもいいから課税する。溜め込むより、投資や賃金に回した方が得だと思わせる。
これくらいの荒療治でなければ、滞った経済の血流は決して良くならないでしょう。
処方箋2:会社にしがみつかず“稼げる自分”になる「労働市場の大改革」
あなたが今の会社で給料が上がらないなら、もっと高く評価してくれる会社に移ればいい。――それができないのが、日本の問題です。年功序列に縛られ、個人のスキルが給料に反映されにくい。この状況を変えるには、労働市場の流動化、つまり「転職が当たり前の社会」を作るしかありません。
- 学び直しへの国家投資: AIやグリーン産業など、これから伸びる分野のスキルを誰もが学べるよう、政府が大規模なリスキリング支援を行う。
- セーフティネット付きの解雇ルール緩和: 企業が新陳代謝を図りやすくする一方で、職を失った人が路頭に迷わないよう、手厚い失業手当と徹底した再就職支援をセットで提供する。
スキルさえあれば、会社に依存せずとも生きていける。そんな社会になれば、企業も優秀な人材を繋ぎ止めるために、必死で賃金を上げるようになるはずです。
処方箋3:GAFAを指をくわえて見るのは終わりだ!「未来産業への国家投資」
そもそも、分けるべきパイ(企業の利益)が大きくならなければ、賃上げは続きません。政府がやるべきことは、目先のバラマキではなく、未来の飯のタネに大胆な投資を行うことです。
- GX(グリーン・トランスフォーメーション): 環境技術で世界をリードする。
- DX(デジタル・トランスフォーメーション): AIや半導体で再び世界を驚かせる。
日本が再び「稼げる国」になる。そのための明確な国家戦略と、覚悟を持った投資。それこそが、巡り巡ってあなたの給料を押し上げる、最も確実な道なのです。
第4章:首相の「しくじり」イジリは神対応?それとも国民への裏切りか?
最後に、もう一つの論点に触れなければなりません。高市首相が見せた、部下の失態を「しくじり」と笑いに変えたあの態度。あなたは、どう感じましたか?
【擁護論】空気を読んだ“神対応”だったのか?
一部には、あれを評価する声もあります。気まずい空気が流れる議場で、ユーモアで場を和ませ、審議を前に進めた。部下を頭ごなしに叱るのではなく、“いじる”ことで救いの手を差し伸べた。危機管理能力に長けた、見事なリーダーシップだった――。そんな見方も、確かにあるかもしれません。
【批判論】国民の苦しみを笑いものにした“最悪の一手”か?
しかし、私はそうは思いません。給料が上がらず、将来に不安を抱える私たち国民にとって、この問題は生活のかかった真剣勝負です。その議論の場で、担当大臣が答えられないという異常事態を「しくじり」という軽い言葉で片付け、笑い飛ばす。それは、私たちの苦しみや怒りを矮小化する、リーダーとしてあるまじき行為ではなかったでしょうか。
J-CASTニュースの記事は、首相自身の過酷な働き方が、他者への想像力の欠如に繋がっているのではないかと指摘しています。国民の痛みに寄り添うのではなく、それを笑いのネタにする。その姿勢こそが、この国の政治が国民から乖離していることの、何よりの証拠なのかもしれません。
まとめ:「しくじり大臣」を笑って終わりにするな。あなたの未来は、その一言にかかっている
国会で起きた、たった一つの「しくじり」劇。しかし、その根をたどれば、日本経済の構造的な病理と、政治システムの深刻な機能不全に行き着きました。
私たちはこの茶番劇から、何を学ぶべきなのでしょうか。それは、政治家の「答弁能力」とは、言葉のうまさではない。政策への本気度、そして私たちの生活への想像力そのものである、ということです。耳障りの良いスローガンを繰り返すだけで、具体的な道筋を何一つ示せない政治家に、私たちの未来を任せるわけにはいきません。
城内大臣の立ち往生は、他人事ではありません。「なぜ、給料が上がらないのか」。この問いに答えられない政治は、いずれ国を滅ぼします。このニュースを単なるゴシップとして消費し、笑って忘れてしまってはいけないのです。
選挙で誰に一票を投じるか。日々のニュースを見て、おかしいことには「おかしい」と声を上げる。そんな、あなた一人の小さな行動が、政治家の背筋を伸ばさせ、この国の空気を変えていきます。国会で立ち往生した大臣の姿は、今の政治に無関心でいれば、いずれ訪れる“私たちの未来の姿”なのかもしれない。そうならないために何ができるのか。今、私たち一人ひとりに、その重い問いが突きつけられているのです。


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