中国大使館、高市氏へXで警告「軍事攻撃可能」投稿に非難殺到【解説】

高市早苗氏を批判した中国大使館のX(旧Twitter)投稿が炎上している様子を示すイメージ画像。 政治
在日中国大使館の公式Xアカウントの投稿が大きな波紋を広げている(画像はイメージです)

この記事のポイント

  • 駐日中国大使館が「敵国条項」を盾に「安保理の許可なく日本へ軍事行動が可能」とSNSで示唆。日本中が「これは脅迫だ」と騒然となりました。
  • しかし専門家は、この「敵国条項」は1995年の国連総会で事実上「死文化」した条文だと一蹴。では、なぜ中国は今さらそれを持ち出してきたのでしょうか?
  • その狙いは、時代遅れの条文を「外交カード」として利用し、高市政権を揺さぶり、日本の世論を分断し、国内向けに「強い中国」を見せつける、計算され尽くした多層的な戦略にあると見られています。
  • この一件は、SNSが国家間のプロパガンダや心理戦の「新たな戦場」になったことを示す象徴的な事件。私たちに問われているのは、感情論を超えた冷静な情報リテラシーです。

「いつでもお前を殴れる」隣国の大使館が、そうSNSに投稿したら?

もしも、あなたの隣に住む大国の公式大使館が、ある日突然、自国のSNSアカウントであなたの国を名指しし、「国連の許可がなくても軍事攻撃は可能だ」と投稿したら…あなたはどう感じますか?これは冗談でも、遠い国の話でもありません。2025年11月、まさに日本で現実に起きた出来事なのです。

引き金は、高市早苗首相による国会での「台湾有事は日本の存立危機事態になり得る」という発言でした。これに牙を剥いたのが中国です。在東京の中国大使館は、公式X(旧Twitter)アカウントを通じて、日本中を震撼させるメッセージを発信しました。

その投稿は、目を疑うような内容でした。デイリースポーツの報道によれば、大使館は国連憲章の「敵国条項」なるものに触れ、もし日本が再び侵略の道を歩むなら、中国は国連安保理の許可なく軍事行動を起こす権利があると主張。続けざまに、釣魚島(尖閣諸島)の領有権まで投稿したのです。たちまち5000件以上のコメントが殺到し、タイムラインは「大使館が国民を脅すのか」「宣戦布告のつもりか」「一線を越えている」といった怒りと戸惑いの声で埋め尽くされました。

これは、SNSが国家間の外交やプロパガンダの最前線となり、国民の感情に直接揺さぶりをかける「新しい戦争」の号砲なのかもしれないのです。この記事では、彼らが持ち出した「敵国条項」とは一体何なのか、そしてなぜ今、この“時代遅れの脅し”を仕掛けてきたのか。その裏に隠された、狡猾なシナリオを徹底的に解き明かしていきます。

中国が振りかざす「敵国条項」は、“死んだ条文”なのか?

「敵国条項」――。この物騒な言葉を、今回の騒動で初めて耳にした人も多いのではないでしょうか。中国大使館が「軍事攻撃も可能だ」という主張の根拠として持ち出しただけに、漠然とした不安を感じたかもしれません。ですが、安心してください。結論から言えば、この条文を根拠に日本が攻撃される可能性は、限りなくゼロに近い。まずはその正体を冷静に見ていきましょう。

70年以上前の“亡霊”―その正体とは

「敵国条項」とは、第二次世界大戦の戦勝国が作った「国際連合」の、その憲法とも言える「国連憲章」に、今なお残っている条文の通称です。具体的には、第53条や第107条などがこれにあたります。

一体どんな内容なのか?Wikipediaの解説を借りるなら、こうです。

「第二次世界大戦中に連合国の敵国であった国」(枢軸国)が、再び侵略政策を始めた場合、国連加盟国や地域安全保障機構は、安全保障理事会の許可がなくても、当該国に対して軍事的制裁を課すことが容認される、というものです。

敵国条項 – Wikipedia

つまり、日本やドイツが二度と戦争を起こさないように、という1945年当時の警戒感をそのまま閉じ込めた、いわば“歴史の化石”のような条文なのです。

国際社会が「終わった話」と認めた決定的証拠

にもかかわらず、中国大使館はこれを錦の御旗のように振りかざした。だからこそ「国連のお墨付きで日本が攻撃されるのか?」と、多くの人が不安に感じたわけです。しかし、ご安心ください。国際社会の共通認識は全く逆。この条項は、とっくの昔に“死んでいる”のです。

その最大の根拠が、1995年の国連総会決議。この時、日本やドイツなどの平和への貢献が認められ、「敵国条項は時代遅れ(obsolete)になった」とする決議が、中国自身を含む常任理事国5か国を含む、圧倒的多数の賛成で採択されました。何を隠そう、当事者である日本の外務省自身が、公式サイトでこう断言しています。

国連憲章中のいわゆる「旧敵国条項」(注18)は、1995年の国連総会決議において既に「死文化している」とされている。

外交青書2006 (5)旧敵国条項の削除 – 外務省

そもそも、1956年に国連に加盟した日本を、今さら「敵国」扱いすること自体が、加盟国の平等をうたう国連憲章の精神に反します。手続きの面倒さから条文が残っているだけで、法的な効力はもはやありません。

では、なぜ? なぜ中国は、誰もが“死んだ”と知っているはずの条文を、わざわざ墓場から掘り起こしてきたのでしょうか。ここからが、この問題の本質です。その裏には、実に計算高い、3つの狙いが透けて見えます。

【深層分析】なぜ中国は“死んだ条文”を蘇らせたのか?隠された3つのシナリオ

効力がないと知りながら、なぜ彼らはこんな手を使ってきたのか。これは単なる感情的な反発ではありません。むしろ、極めて計算された「外交的ブラフ(脅し)」なのです。私が注目するのは、その裏に隠された3つのシナリオです。

シナリオ1:【対日】“揺さぶり”で日本の世論を真っ二つにする

彼らの最初の狙いは、私たち日本人の心に直接揺さぶりをかけること。つまり、心理戦です。「日本が軍国主義に回帰すれば、中国は攻撃する権利がある」という過激なメッセージは、日本の世論を真っ二つに引き裂くことを狙っています。

  • 安全保障への不安を煽る:「日本の防衛力強化や憲法改正は、隣国を刺激し戦争を招く」と考える人々の不安を、これ以上なく掻き立てます。
  • 政権批判を誘発する:「高市首相の挑発的な言動が、中国との無用な緊張を生んだのだ」という批判の声を国内で増幅させ、政権の足元を揺さぶるのです。

案の定、この揺さぶりは効果を発揮します。ネット上では、かねてから敵国条項の危険性を訴えてきた特定の政治家の過去の発言が掘り起こされ、再評価されるなど、問題は即座に国内の政治対立の燃料となりました。これこそ、中国が望んだ日本の「内部分断」の姿なのかもしれません。

シナリオ2:【対台湾】高市首相の“急所”を突く強烈なカウンター

忘れてはならないのが、今回の騒動の直接の引き金です。そう、高市首相の「台湾有事は日本の存立危機事態」発言。これを中国が黙って見過ごすはずがありません。

大使館の投稿は、まさにこの発言に対する強烈なカウンターパンチです。「台湾に手を出すなら、お前自身が火の海になる覚悟はあるのか? その“大義名分”なら、国連憲章にだって書いてあるぞ」――。そう恫喝することで、日米台の連携にクサビを打ち込もうというわけです。同時に、尖閣諸島(中国名:釣魚島)の領有権を改めて主張し、東シナ海での日本の動きも封じ込める。まさに一石二鳥のメッセージなのです。

シナリオ3:【対国内】国民の不満を逸らすための“愛国ショー”

そして3つ目のシナリオは、彼らの“内側”に向けられたものです。どんな外交も、国内向けのショーという側面を必ず持っています。

今の中国が、決して盤石ではないことを、あなたもご存知でしょう。深刻な不動産不況、記録的な若者の失業率…。国内に渦巻く不満のマグマは、いつ政権を揺るがしかねません。その矛先を外に向ける必要があります。

「高市首相の『妄言』に対し、我が国は断固として鉄槌を下した」「歴史健忘症の日本に、国際法を突きつけてやった」――。これほど手軽で効果的な“愛国ショー”はありません。大使館のSNSという舞台で日本を厳しく非難する姿は、習近平政権の「強いリーダーシップ」を国民に見せつけるための、最高のパフォーマンスなのです。

もはや他人事ではない。SNSが国家間の“主戦場”に変わった日

この一件を、ただの二国間の揉め事だと考えているなら、それはあまりに楽観的すぎます。私たちは今、歴史的な転換点の目撃者なのかもしれません。そう、SNSが国家間のプロパガンダや心理戦の“主戦場”と化した、その瞬間を。

かつて、国家間のやり取りは、分厚い扉の向こうで行われる外交交渉か、官僚が読み上げる堅苦しい公式声明がすべてでした。しかし、SNSがその常識を根底から破壊したのです。

  • 直接性:大使館が、メディアや政府をすっ飛ばし、相手国の国民一人ひとりのスマホに直接メッセージを送り込める。
  • 拡散力:衝撃的な一言が、瞬時に何百万人に拡散され、世論を焼き尽くす。
  • 非公式性:「公式見解」の皮を被りながら、より攻撃的で感情的な発信ができ、都合が悪くなれば「個人の見解」と逃げることもできる。

このような「SNS外交」は、もはや中国の専売特許ではありません。ウクライナ侵攻前のロシアによる偽情報キャンペーン、イスラエルとハマスのSNSを駆使した正当性の主張合戦…。世界はすでに、この新しい戦争の時代に突入しています。

あなたが今回目撃したのは、「中国大使館 vs 高市首相」という個人プレーではありません。国家がSNSというメガホンを使い、日本の世論に直接ナイフを突きつけようとする、**「新しい戦争」の始まり**なのです。こんな時代だからこそ、私たち一人ひとりに問われているのは、感情的な脊髄反射ではなく、その裏に隠された意図を冷静に見抜く「情報リテラシー」なのです。

「怖い」「許せない」の先へ。この“SNS恫喝”と私たちはどう向き合うべきか

「軍事攻撃も可能だ」――。隣国の大使館から放たれたこの言葉は、間違いなく多くの日本人に怒りと、そして少しの不安を抱かせたことでしょう。

しかし、もうあなたには分かっているはずです。彼らが振りかざした「敵国条項」は、とっくに錆びついた剣であり、これは法的な脅しというより、極めて政治的な「ブラフ」なのだと。「怖い」「出ていけ」といった感情的な反発だけで終わってしまえば、それこそが相手の思う壺。世論が感情的に二分され、国内が混乱することこそ、彼らが最も望む結果の一つなのですから。

だからこそ、私たちがすべきことは、一歩引いて「なぜ、今、この言葉を?」と問いかける冷静さを持つことです。その裏には、高市政権への牽制、台湾問題、そして国内向けのプロパガンダという、幾重にも張り巡らされた計算が隠されているのです。

では、私たち一人ひとりに何ができるのか。それは、政府の毅然とした対応を静かに見守りつつ、SNSのタイムラインに流れてくる扇情的な言葉に、心をかき乱されないことです。一つの情報源を鵜呑みにせず、多角的な視点から物事の本質を捉えようと努めること。情報に踊らされるのではなく、情報の意図を読み解く。それこそが、SNSという“戦場”を生き抜くための、私たちにとって最強の盾であり、武器になるのですから。

コメント

タイトルとURLをコピーしました