【プロローグ】海を渡るエリート、ハさん(35)の婚活に密着
「結婚相手が見つかるまで、何回でも来ます」――
流暢とは言えない日本語で、しかし真剣な眼差しでそう語るのは、韓国の大手航空機メーカーで研究開発職に就くハ・ギョンミンさん(35)。2025年8月、彼は日本人女性とのお見合いのため、再び日本の地に降り立ちました。
この日のために猛勉強した日本語で自己紹介し、お見合い場所には女性に人気の抹茶カフェを選ぶ細やかな配慮を見せます。手には、自身の仕事への情熱を物語る戦闘機のバッジ。これをプレゼントし、少しでも自分を知ってもらおうと懸命にアピールします。
結婚相談所の入会金、日本への渡航費、滞在費、そしてお見合いのためのヘアセット代…。彼がこの婚活にかける費用は、すでに100万円を超えています。それでも、ハさんは言います。「相手が見つかるまで、年に何回も来日する」と。
なぜ、彼はそこまでして日本人女性との結婚を望むのでしょうか?エリートでありながら、なぜ自国での出会いではダメだったのでしょうか。今、ハさんのように日本人女性との結婚を夢見て、海を渡ってくる韓国人男性が急増しています。
国内での出会いに悩み、選択肢の少なさを感じているあなたにとって、これは新たなチャンスなのでしょうか?それとも…。この記事では、この現象の裏にある韓国の厳しい社会事情と、彼らが日本に惹かれる本当の理由を徹底的に掘り下げます。
なぜ急増?韓国人男性が日本を目指す3つの理由【データで解説】
ハさんのような男性が日本を目指す背景には、個人の想いだけでは片付けられない、韓国社会が抱える根深い問題が存在します。主に3つの理由が考えられます。
理由1:逃れられない「家」という名の経済的重圧
ハさんが漏らした本音が、この問題の核心を突いています。
「韓国の結婚文化では、男性が家を用意するのが当たりまえです。ローンを組まずに家を買うとしたら、40歳になってしまいます」
韓国、特にソウル都市圏の不動産価格は近年、異常な高騰を続けています。多くの若者にとって、自力でマイホームを持つことは夢のまた夢。そんな中で「結婚=男性が家を用意するもの」という伝統的な価値観が、今もなお根強く残っているのです。
30代で結婚したくても、家が用意できない。この巨大な壁が、多くの男性の結婚を阻んでいます。そこで彼らは、この文化的なプレッシャーが比較的少ないとされる日本に、活路を見出そうとしているのです。
理由2:「共に築く」という価値観への期待
経済的な理由と密接に関わるのが、結婚相手に求める価値観です。男性だけが過度な経済的負担を背負うのではなく、「パートナーと協力して家庭を築いていきたい」と考える韓国人男性は少なくありません。
彼らの目には、日本の女性がより対等なパートナーシップを重視し、経済的な負担についても共に分かち合う姿勢を持っているように映ることがあります。もちろん、これは一面的なイメージかもしれませんが、「そうであってほしい」という切実な願いが、彼らを日本へと向かわせる強い動機になっています。
理由3:激化する国内競争と深刻な未婚化
そもそも、韓国国内でパートナーを見つけること自体が、年々難しくなっています。NHKの報道によれば、韓国では晩婚化・非婚化が急速に進んでおり、2020年の時点で30代の未婚率は男性で50.8%、女性で33.6%に達しています。(出典: 結婚しない人が増えた韓国 ビジネスも“単身世帯“に注目 – NHK)
つまり、30代男性の2人に1人が未婚という現実。これは、出会いの機会そのものが減少していることを意味します。
一方で、ロイター通信は2025年2月の記事で、2024年の婚姻件数が前年比14.9%増と、統計開始以来で最大の伸びを記録したと報じています。(出典: 韓国出生率、24年は9年ぶり上昇 0.75に 婚姻数15%増 – ロイター)
このデータは一見、状況が好転しているように思えるかもしれません。しかし、見方を変えれば、「結婚への意識は高まっているにもかかわらず、国内の経済的・社会的なハードルが高すぎるため、海外に目を向けざるを得ない男性たちがいる」という、問題の根深さを浮き彫りにしているとも言えるのです。
費用は?成功率は?結婚相談所が明かす「韓国人男性との婚活」のリアル
この現象をビジネスとして支える結婚相談所には、今、韓国人男性からの申し込みが殺到しています。元ニュースに登場した相談所では、実に8000件もの申込書が保管されていました。では、実際に彼らとの婚活はどのようなものなのでしょうか。
想像以上の「本気度」と「投資」
ハさんの例を見ても分かる通り、彼らの婚活は決して手軽なものではありません。100万円以上という費用には、相談所の登録料や活動費に加え、お見合いの度に発生する往復の航空券や数日間の滞在費などが含まれます。時間とお金を惜しまないその姿勢は、彼らの結婚に対する「本気度」の表れと言えるでしょう。
成功の鍵は「文化の壁」を越える努力
もちろん、お金と情熱さえあれば成功するわけではありません。相談所の代表は、成功するカップルの特徴として「互いの文化を理解し、尊重しようとする姿勢」を挙げます。
言葉の壁はもちろん、生活習慣や家族に対する考え方の違いなど、乗り越えるべきハードルは数多く存在します。しかし、最初から「違うこと」を前提とし、それを学び、受け入れようと努力できるかどうかが、国境を越えた愛を育む上での最大の鍵となります。
注意点:憧れだけでは続かない現実
K-POPや韓国ドラマの影響で、韓国人男性に良いイメージを持つ日本人女性は多いかもしれません。しかし、国際結婚はキラキラした面ばかりではありません。遠距離での交際、ビザの問題、そして将来どちらの国で暮らすのかといった、現実的でシビアな問題と向き合う覚悟が必要です。
これはチャンス?それとも脅威?この現象が日本の婚活に与える影響
さて、この社会現象を、私たちはどう受け止めればよいのでしょうか。婚活をしている方々の立場から、考えてみたいと思います。
【婚活中の女性へ】出会いの選択肢は、海を越えて広がる
「いい人がいない…」日本での婚活に疲れを感じているのは、あなただけではありません。もし、あなたがパートナーに「経済力」以上に「誠実さ」や「共に歩む姿勢」を求めるなら、この現象は大きなチャンスかもしれません。
視野を少し広げるだけで、そこには人生をかけてあなたを探しに来てくれる男性がいるかもしれないのです。もちろん、文化や言葉の壁はあります。しかし、それを乗り越えるほどの情熱を持った相手との出会いは、あなたの人生をより豊かにしてくれる可能性を秘めています。
【婚活中の男性へ】あなたの「当たり前」が、実は武器になる
「ライバルが増えるのか…」と、不安に感じた男性もいるかもしれません。しかし、見方を変えれば、これは自身の魅力を客観的に見つめ直す絶好の機会です。
あなたが当たり前だと思っている「日本語でスムーズにコミュニケーションが取れること」「日本の文化や価値観を深く理解していること」は、海外から来る男性にはない、非常に大きなアドバンテージです。彼らの真剣さに刺激を受けつつ、日本人男性ならではの細やかな気遣いや安心感を、改めてアピールしてみてはいかがでしょうか。
【エピローグ】あなたの「結婚」の価値観は?
韓国人男性の日本での婚活ブームは、単なる一時的なトレンドではありません。それは、日韓両国の若者が抱える経済的な不安や、変化する結婚観を映し出す「鏡」のような社会現象です。
結婚にはお金がかかる、将来が不安…。その感覚は、国境を越えた共通の悩みなのかもしれません。韓国の厳しい経済事情は、決して他人事ではないのです。
この記事を読んで、あなたは何を感じましたか?
この現象は、私たち一人ひとりに「自分にとっての結婚とは何か」「パートナーに本当に求めるものは何か」を、改めて問いかけています。その答えを見つける旅の途中で、この記事があなたの世界を少しだけ広げるきっかけになれば幸いです。
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